2007年 01月 30日

固定費の変動費化

本日見つけた不思議な議論二つ。


①ABCを導入することで固定費の変動費化を図ることができる

いや、無理だと思いますよ。普通に考えて。

そもそも変動費の変動費たる所以って、対象とする事業活動の活動量が落ちるのに伴って費用の発生額も落ちるという経済実態にあるのであって、ABCは所詮間接費の賦課方法でしかないのだから。本当に固定費を変動費化しようと思ったら、正社員の首を切って派遣に切り替えるとか、間接部門を従量契約でアウトソースするとか、内製していた製品を外注するとか、経済実態の根本を変える必要があるでしょう。

そりゃ、ABCを導入して間接費の賦課を従量制にすれば、とある事業部門からみれば変動費的になったと言えるでしょうが、会社全体での費用発生額が変わってなかったら全く意味がない。この状態のままで事業活動のレベルが下がったら、事業部門自体は賦課される費用額も下がるので特に痛手は蒙らないが、会社全体では間接費の膨大な賦課漏れが生じる。かくして、会社の各事業部門を見ると主要部門は全て黒字なのに、会社全体で見ると赤字になっている、というアホな状態が生まれるというわけ。

で、賦課漏れを回避しようとしたら、会社全体の費用発生額と事業部門の事業活動レベルから算出される賦課レートを都度変更すればいいわけですが、こうするとどうなるかと言うと、事業部門の側から見ると結局固定費として賦課されているのと全く変わらないことになる。

結局、管理会計のあり方を変えるだけで経済実態を変えられるかのような議論はまやかしでしかない。

では何故、「ABC導入で変動費化」といった議論が世の中でこれだけ幅をきかせているかと言えば、それはABCを導入することで不要な間接費を浮き彫りにさせる効果があるからでしょう。でも、ここで肝心なのは浮き彫りになった不要な間接費は即座にカットするという覚悟が必要だ、ということ。間接部門で人員余剰が明らかになればすぐに人を減らす、とか。

物事を変えるには須らくその実態に踏み込む必要がある、ということ。単に組織をいじったり、目先の管理手法を変えるだけでは改革にはならないんですよ。

(ちょっと横道)

最近は、「固定費の変動費化」があちこちで叫ばれて、とにかく何でも変動費化すればいいような極端な論調も耳にしますが、忘れちゃいけないのは、単価ベースで見た場合は変動費より固定費の方がお得なことが多いということ。まあ、当然と言えばあまりにも当然ですが。なので、大事なのは事業活動の振幅を領域ごとに適正に予想して、ある程度の活動が継続的に見込める領域には積極的に資本投資して固定費化していけばいいし、振幅の大きな事業はたとえ割高であっても変動費での運用を続ける、そんなバランスが何よりも大事なのではないかと思います。

全部当たり前のことなのですが、最近「こうすれば全て解決」みたいな議論があまりにも横行しているのが、少し気になったもので。


②A社によるB社買収に、C社が資本参加することにより、A社は資金回収の早期化を図れる

済みません。これも普通に無理だと思います。

同じ紙面に「資金リスクを軽減できる」という表現もあって、こちらは言い得て妙だな、と思うのですが。

ファイナンス理論ではなく、純粋に算数の問題だと思うのですが、とりあえず金利は無視して次の例を考えてみます。

Aさんは6,000円払って、Bという名の金の卵を産むニワトリを買いました。Bは毎日卵を産み、その卵はすぐに300円で売れるものとします。この状況では、Aさんは、6,000円/300円=20日あれば、最初に払った6,000円を回収できることになります。

ここで、Aさんのお友だちであるCさんが「友だちであるAさんのために、ボクも少しお金を出してあげるよ」と言って、1,000円を出してくれました。このCさんの出現により、Aさんは(6,000円-1,000円)/300円=16.7日でお金を回収できることになり、無事に資金回収期間を短期化することができたのでした。メデタシ、メデタシ。。。

。。。

この議論がおかしいのは小学生でも分かるような気がします。AさんとCさんの友情関係がどうあるかはともかくとして、少なくともCさんはお金を出す以上、「Bの持分の1/6はボクのものだから、卵の代金の1/6はボクにちょうだい」と言うはずであり、その結果Aさんの資金回収期間は(6,000円-1,000円)/(300円-50円)=20日で何ら変わりないということになります。まあ、リスクの絶対額は減るので「資金リスクの軽減」とは言えるのでしょうが。

でも、Aさんって以前は「このニワトリは6,000円だけど、ボクがお金を出すのはその半分だし、卵は毎日200円くらいでは売れるから、回収するのに20日もかからないんだよね」とか言ってたような気がするので、上の議論は知っててトボケてるのか、世間には公表していない隠し玉があるのでしょう。きっと。

後は、ニワトリが流行りのインフルエンザにかからないように気をつけることでしょうか。紙面によると、Cさんはどうやら買取請求権を持っているらしいので、それがギリギリの局面でどう使われるのか(あるいは封印されるのか)とっても楽しみです。


あ、そんな皮肉ばっかり書いてないで出張の準備しなきゃ。明日からしばらく神戸です。

♪そしてひとつが、う~まれ~♪
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by kcchicago | 2007-01-30 23:31 | 仕事 | Comments(0)


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